◆第一句集
返り花あたり見回すやうに咲き
小春日のころ、桜やつつじが季節はずれの花をつけることがある。可憐であるが、それを、周囲をうかがうように遠慮がちに咲いていると見た。春や夏に咲き競っている花とくらべて寂しい趣で、いかにも初冬らしい。見事な感情移入。
(帯より・鷹羽狩行)
◆大野崇文抄出句より
食積の海老が牛蒡に支へられ
厳寒やあめつちのもの慈しみ
魚は氷に上りて人は旅ごころ
夕闇の襞の中より蚊食鳥
八月の空や声なき声の降る
真つすぐに雲を見つめて捨案山子
生きもののごとく追ひ来る山の霧
野の花をさらりと活けて月祀る
繕ひの妻と分けあふ夜長の灯
返り花あたり見回すやうに咲き
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[くぼたしせい(1941〜)「狩」同人]
序句・鑑賞三句:鷹羽狩行
装丁:君嶋真理子
四六判ハードカバー装
188頁
2016/9/28刊行