◆戯曲作品集
作品は戯曲の形式だが、概ね自由に解してもよい物語的な内容である。そのなかで〝女鳥"と〝綺羅の鼓"は詩劇風のものであり、表題は長編である前者、副題には物語の意の譚を付した。
(あとがきより)
◆「野いばら」より
マリア [繁みを見詰め] この野いばらは、冬なのにつぼみが付いています。綻びかけた薄みどり、帰り花の蕾でありましょうか。仄かに香りが漂って参ります。詐りの季節である事も知らずに。少し待てば、降誕祭の頃から、新しい陽の恵みを受けられましょう。
あなた様の今迄過ごされた日々は、過酷なものであったと存じます。どうかこれからは、慈しみを受けられますよう、祈っております。
カロン [空を見上げる] ぽつぽつと空から降ってくるもの、山々をめぐり時雨れてゆくか。降りみ降らずみ、さだめなき時雨は冬の初めなりける。お別れしてから、わたしの身の上も気持ちの上でも、まだまだ揺れ動くものがあり申した。
だがあなたと再び出会うて、己の生き方にとって、まことの運命がこれより始まる事となる。そのように信じております。
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[おかやまはるよし(1933〜)]
装丁:和兎
A5判ペーパーバック装
340頁
2016/9/22刊行