◆第一歌集
元気なときに歩き、書きおいて良かったと思います。その時々が懐かしく日記のようです。身内に読んでほしいと思い本にしました。
(あとがきより)
◆収録作品より
梅雨明けの今朝の裏山すがすがし遠近に聞くかなかなの声
白じろと東雲の空明けんとす鳶の鳴く音のいずこよりして
亡き夫の山墓に来て語りつつ秋の草花供えていたり
クレマチス支柱もらえず荒草へ絡みて咲けり紫の花
すずめ蜂の巣をとらずいて刺されたり夜を待ち討つ心となりぬ
高空に音無く一本白雲を刷きゆく如し飛行機雲は
子のくれし庚申バラ咲き「急ぐな」とう添え書きありしこと思い出す
微かなる異常に気付きし運転手タイヤ交換して旅を続くる
親の会時にはわっと皆笑う釣られて笑う耳遠ければ
雨止んで舗道跳びいる子蛙ら車来ぬ間に急ぎ渡れかし
*
[すずきとしこ(1922〜)]
装丁:和兎
170頁
2016/08/10刊行