◆第一句集
湯ざめする女の身にもなつてみよ
この啖呵の小気味よさ。銭湯の前で長湯の男を待つ女。あるいは湯宿に敷かれた蒲団の傍らで男を待つ女。そうした女の姿に仮託して、「女の身にもなつてみよ」の啖呵はこの世のすべての男どもに向けて切られるのだ。「女の身にもなつてみよ」、思えばこれがこの句集全体の放射するテーマなのである。
女のいじらしさ、男のたよりなさ、この世の理不尽を一身に負って、三代さんはこれからも俳句とともに突き進むのだ。
(序より・小川軽舟)
◆小川軽舟選
香水瓶並べし程に気まぐれも
東京は闇に飢ゑたり金魚玉
百合手向け事もあらうに嫉妬心
狐火や陶器のやうな女の背
蝌蚪に足もはや私の手に負へぬ
風船のちやほやされて割れにけり
柊の花やいつから泣いてゐた
凍蝶や何も映さぬ男の目
蠛蠓に試されてゐる突き進む
*
[みしろすみよ(1959〜)「鷹」同人]
序・小川軽舟
装丁:和兎
四六判ソフトカバー製小口折表紙
204頁
2016/7/27刊行