◆第四句集
つつかけて来たる岩魚の釣られける
鳥も獣も蟲も魚も、さらには花も木も草も、われわれ人間とまったく同格に生まれ、生き、死んで行く。彼ら、言わば、この限りある小さな「地球号」に同乗する「仲間たち」を、良く見、聞き、知り、「あはれ」と感じ、讃美することが、我々の彼らへの礼儀であり、仁義なのではあるまいか。そこにこそ「花鳥諷詠」の根本的な立場があるのだと私は確信する。
(あとがきより)
◆自選十六句より
鰰の山を鰰滑り落つ
明日知れぬとは蛇穴を出づるにも
按ずるに「みや」と啼くゆゑ都鳥
ぶつかつてばかりのそいつ蟻の道
すつぽんの狸貌なる水の秋
門灯や今宵歌留多の客迎へ
里山のおしるこ色に芽吹くかな
椿寿忌の大をなしたる小躯かな
老人に菊花展あり昼酒あり
つぎゝと飛魚を蹴り出す舳かな
*
[もといえい(1945〜)「夏潮」主宰]
装丁:君嶋真理子
四六判ソフトカバー装
192頁
2016/7/27刊行