◆第一句集
新墓にジタン・カポラル冬木の芽
言葉が創作の動機になる。それは固有名詞でも同じことである。ジタン・カポラルはフランスの煙草。青い箱に紫煙に踊るジプシーの女がデザインされている。銘が刻まれたばかりの真新しい墓に、故人が好んだと思われるこの煙草が一箱供えられている。あとは季語を配しただけだが、読者の頭に浮かぶ映像はやはり鮮やかだ。
(序より・小川軽舟)
◆抽出十五句より
蓑虫の吾が手にあれば鳴きしかな
蛍烏賊くわうくわうと喉過ぎゆくか
雪間草呪禁のごとく湖鳴れり
虹消えて音楽室のデスマスク
松の花父より歌稿届きけり
ねんねこや鈍間色なる佐渡の海
鱈船に海盛りあがる日の出かな
マウンドに青空だけの子規忌かな
幕引がすたたたたたと春の暮
立葵妻の写真を撮りにけり
*
[きしたかのぶ(1948〜)「鷹」月光集同人]
序:小川軽舟
装丁:和兎
四六判並製カバー装
198頁
2016/7/23刊行