◆第一句集
西山のひとしく昏れて手毬唄
吟行によって鍛えられた眼と、生来の瑞々しい感性、そして知性がもたらす寡黙で抑制された表現。恭子俳句の真髄は、俳句という祈りの言葉によって、対象と心を通わすことにある。その無欲で純粋な姿勢が、透明感のある作品を生み出すのである。
(序より・井上弘美)
◆自選十二句より
寒林にわれも一樹と思ふまで
頰杖に雲ちぎれゆく漱石忌
蹠なき紙の雛を起こしけり
月涼し風船かづらふやしては
秋楡にまつすぐな空休暇果つ
螢狩息を川瀬へ沈めたる
柿一顆雨の底ひの去来塚
春分の波光の攫ふ鷗かな
海霧ひくや群れとぶものを放ちつつ
六波羅のわけても雨の桔梗かな
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[うのきょうこ(1958〜)「汀」同人]
序:井上弘美
装丁:和兎
四六判並製カバー装
218頁
2016/7/4刊行