◆第一句集
分かろうとしない。前から順に読まない。退屈なとき、とても贅沢な気分のとき、なんだか泣きたいとき、ぱらっと何ページ目かを開く。すると、そこにある言葉が話しかけてくるだろう。以上がこの句集のほぼ唯一、そして屈強の読み方だ。私はさっき、花鳥賊の笑い声を聞いた。15ページの「崖が見え空が見え花烏賊のゆく」の花鳥賊の愉快そうな声だ。
(帯より・坪内稔典)
◆「アメリカの夜」より自選十句
名月やみなアメリカの夜めいて
宇宙船錆びるともなく浮くともなく
細かくいへばタイツのゆるいフレディ・M
円盤の枯野はつかに浮き上がる
逃水のむかう嘆きの天使楼
知つてゐるモビルスーツの中は裸
滝の上に探偵が来て落ちにけり
くり返すイソノカツオの夏休み
冷房を止めてくれろとジルベルト
ガーベラやベティの家はみなスミス
*
[おかのたいすけ(1945〜)「船団の会」所属]
帯:坪内稔典
装画:五木田智央
挿絵:岡野泰輔
装丁:和兎
四六判並製カバー装
152頁
2016/7/9刊行