◆第一句集
雪折れの隣の枝をはね返す
平凡な写生の句は一句もない。ふだん誰も見ている普通のこと、見逃して誰も詠まなかったこと、それを捉えて実に新鮮である。
(序より・小原啄葉)
◆自選十二句より
まほろばの春は空より生まれけり
桜蕊土に還りしものへ降る
約束の叶はぬままに鳥帰る
玫瑰や展望台に海戦図
ででむしの旧知のごとく角出せる
海の日や何も語らぬ海がある
夏帽子誰も座らぬ椅子におく
子蟷螂まだやはらかき鎌あげる
国ぢゆうにラヂオ体操終戦日
縄文の大甕の底ちちろ鳴く
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[つしだたけし(1940〜)「樹氷」同人]
序:小原啄葉
挿画:津志田武
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
192頁
2016/06/23刊行