◆第一句集
なんといってもりんさんの作品の骨格をなすのは物に向かっての観察と把握、その上での感覚の閃きではなかろうか。
生きてゐる匂ひと思ふ春の川
感覚の冴えを見せ、物の本質や実相に迫っていると思う。
(序より・石田郷子)
◆自選十二句より
背泳ぎの背に樹海のある如く
星まつる人さやさやとありにけり
瞬けばこぼれてしまふ揚雲雀
氷山をぶつけ合ひたり大ジョッキ
薬局に秋雨の傘たたみけり
太陽のころがつてゐる冬田かな
草の実を採つて途方に暮れにけり
負けん気のぎつしりの黒葡萄かな
二つ三つ手にとり一つ撰るレモン
春の卓水輪のやうに皿を置き
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[うえだりん(1957〜)「椋」所属]
序:石田郷子
装丁:和兎
四六判並製小口折表紙
244頁
2016/6/30刊行