◆第一句集
春満月すこしわたしに飽きたころ
これらの句に出会ったとき、あっと驚き、それから、快い場所に不意に立ったような幻惑を覚えた。なんていうか、とても素敵な音を聞いたときの感じ、あるいはあこがれの色を目にしている感じ、そうした感じがその幻惑にあった。
(跋より・坪内稔典)
◆収録作品より
0.2カラットの春光猫のひげ
サリーのようにまとう夏雲の切れっぱし
スカーフ飛んだ飛んだ蝶の解放区
あおむけに寝て秋冷のヴァイオリン
5ノットほどの舟漕ぐ春の椅子
近況はコスモスときどきアルマジロ
今という表面張力小鳥来る
コンソメキューブぽとん梅三分
サフランライスふわっと春に接岸す
哺乳類サル目ヒト科コダマキョウコ
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[こだまきょうこ(1948〜)「船団」所属]
跋:坪内稔典
装丁:君嶋真理子
四六判変型並製カバー装グラシン巻
136頁
2016/06/17刊行