◆第三句集
「遊刃」は、『荘子』【内篇】にある故事、「恢恢乎其於遊刃必有餘地矣」に拠ります。料理人丁の見事な牛刀さばきに感嘆した魏の恵王に対して丁が答えたとされる一節。畢竟するに、技よりも道が大切であるとの謂。この書の命名には、定型詩としての俳句に、自らの生きる道を重ねつつ芸の道を深めたいという思いを込めています。(あとがきより)
◆自選十五句より
十六夜のかうかうと河曲りゆく
時國家なほ覚めやらず梅の花
洛中にひと日溺れて鱧の皮
鳶の輪のしだいに高き大花野
洞といふ窓ひらく木々十三夜
眇々のこゑ松林図屛風より
怒る笑ふ円空仏のこゑや春
明易や蒔絵文箱の銀の月
定まらぬこころをさめし榾火かな
円位忌の海のにほへるところまで
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[くすどまさる(1941〜)「翡翠会」代表]
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
140頁
2016/05/20刊行