◆第五句集
戸隠の五風十雨の花野かな
五風十雨とは、五日に一度の割合で吹く穏やかな風と、十日に一度の割合で降る恵みの雨。これは農耕によろしく、天下泰平にも通じる気候であるという。花鳥諷詠もまた、五風十雨という順調な気候条件を前提として成立する文藝なのではなかろうか。(帯より)
◆自選十二句より
田に神の宿る頃とや春時雨
春風にしては白髪にきびしけれ
うらおもて水を打つたる櫻鯛
揺れ戻す首のちからや白牡丹
空蝉も蝉も吉野の風の中
青竹の如くに雷や不破の関
鶏のめつきり白く桐一葉
名ばかりの秋風八月十五日
聞きとめて邯鄲の野となりにける
人混みに風の割り込む一の酉
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[すはらかずお(1938〜)「貂」同人]
装丁:君嶋真理子
菊判変形上製カバー装
270頁
2016/05/14刊行