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◆ 第二句集
「色づきて数を増やせし庭の柚子」色づいて初めて柚子の数が見てとれるようになったという、上質の俳味。「遠く来て手のひらほどの熊手買ふ」わざわざ遠くからやって来た酉の市で、買ったのは小さな熊手というところにつつましやかな心情が見える。こうした感受性と知的な構成力は、集中に多い海外俳句についてもいえることで、安定した力量を納得させる。(鷹羽狩行)
賑はひてさびしきものに流灯会
道を聞くには耕人の遠きかな
赤とんぼ刃のごとき葉に止り
こころざしいまだ明かさず冬木の芽
日を乗せて流れてゆきぬ薄氷
色づきて数を増やせし庭の柚子
遠く来て手のひらほどの熊手買ふ
寄りてくるものは拒まず花筏
着ぶくれて空の青さの絵皿買ふ
宮殿を水路で訪ひて夏惜しむ
「狩」同人(1932〜)]
定価 本体2571円+税=2700円
帯・鷹羽狩行
装丁・君嶋真理子
四六判フランス装
168頁
200701.25刊行