◆第一句集
書家として長年活動を続けてきた著者のもうひとつの世界である俳句。言葉によって自身を表現する俳句と、文字をみずからの手で形にする書。両者との遭遇は必然だったのかもしれない。若き日に出合い、折々の心を綴ってきた俳句が、書の白と黒の世界に彩りをそえているように思う。(帯より・片山由美子)
◆片山由美子抽出より
子育ての日々遠くなり落葉踏む
新緑や十字架が負ふ重きもの
春雷や眠りを知らぬ木馬の眼
紫陽花の揺れれば藍の滴りぬ
一塊となり子等が行く麦の秋
足許にさざ波のよせ秋の湖
母になき齢の日記買ひにけり
花舗の灯の潤みてゐたる聖夜かな
羅にほてりを包む夕べかな
凍蝶にかすかな影のありにけり
*
[あだちすいせん(1934〜)「玄翠会」主宰]
跋:片山由美子
装丁:君嶋真理子
四六判上製
194頁
2016/05/10刊行