◆第一句集
笹鳴きや折あるたびに開く文
心あたたまる手紙だろう。恋文かもと思わせるのは、「笹鳴き」があるからだ。
水中花を植物のように見、虫売りが闇をふくらませ、ささやきかけるような文など、微妙な勘定を織りまぜた作風が著者の特徴といえよう。
(帯より・鷹羽狩行)
◆田口紅子抽出十句
繭玉の揺らぐは座敷童とも
松飾りはづして家の軽くなり
くれなゐの穂先ほぐるる牡丹の芽
せせらぎのひかりにまぎれ薄氷
衣更へてこころもとなき膝がしら
登りきて標高千の捕虫網
青き影曳きてくちなは横切りぬ
門の外まで散らかして松手入
笹鳴きや折あるたびに開く文
椰子の木を明滅させて除夜花火
*
[わたいかよこ(1948〜)「狩」同人]
序句・鑑賞三句:鷹羽狩行
装丁:君嶋真理子
四六判並製小口折グラシン巻
180頁
2016/04/09刊行