◆第一句集
俳諧師絵師酔蕪村春の闇
句集最後の作、微醺を帯びた蕪村と春の闇が、俳諧と絵画と不思議な物語へ読者を誘う。その春の闇に通う生命感は、「奇跡の一滴」と言った命の燃焼の幸福に通底するだろう。
(序より・井上康明)
◆自選十句
秋惜しむ笹舟水に置くやうに
朝ぐもり壺中に醒めしごとくゐる
それぞれのしづかな色を草の花
八間の梁の貫く余寒かな
炎帝がわしづかみする裸馬
十三夜ひとりにひとつづつの影
灯すこと忘れてゐたる春の雪
一寸の実生まつたき紅葉かな
遠郭公明けゆく空の無一物
鳥曇またもらひ泣きしてゐたり
*
[きさらぎのら(1953〜)「郭公」同人]
鑑賞四句:廣瀬直人
鑑賞一句・序文:井上康明
栞:神野紗希
装画:今村由男
装丁:和兎
四六判変型半上製カバー装
194頁
2016/03/30刊行