◆第一句集
無器用に擡ぐるほかなき枇杷の花
個性は、俳句に限らず、いずれの文学においても貴重である。作者には、目の付け処においても感性においても独特なものがある。それは、人が見落していたものを拾い上げ、新しく捉え直す繊細な感性である。(序より・鈴木貞雄)
◆自選十五句より
棉吹いてこの世の不思議また一つ
下萌の突立つものと這ふものと
野遊びの遠くの犬を呼び戻す
金縷梅の一つまみづつ日を集め
裸の子砂はらへどもはらへども
泥かぶる早さも高野聖なる
鶏を遊ばす茅花流しかな
よく滑る襖一領春立てり
一羽づつ目覚め汽水の鴨百羽
全力で立つ水色の寒あやめ
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[たかおかちかこ(1943〜)「岬」「若葉」同人]
序:鈴木貞雄
栞:神野紗希
装丁:和兎
四六判変型半上製カバー装
218頁
2016/03/01刊行