◆第一句集
睡蓮の淡き浮力が咲きのぼる
植田さんは難しい理論を声高に述べるのではなく、実作を示すことで無言の内に範を垂れている。まさに「鐘楼に高さ譲らず」といった気迫を感じるものであり、たとえ新人相手であっても真剣に全力で対峙する姿勢は俳句そのものへの敬意の表れでもある。(跋より・野中亮介)
◆自選十句
水指の蝶の浮き紋釜初
太箸や正座くづさぬ屋島山
絵硝子に遠嶺のひかり春隣
鞦韆や天守と海とまた天守
花冷や目の詰りたる有馬籠
春鴨の数だけ風を置いてゆき
リラ冷や魁夷の白馬首たれて
讃岐富士芯まで晴れて稲筵
冬銀河バッハ組曲堂に満ち
ジプシーの靴紐あかし小六月
*
[うえたけいこ(1936〜)「馬醉木当月集」同人]
序:德田千鶴子
跋:野中亮介
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
260頁
2016/04/05刊行