◆短詩の持つ限界を超えた世界
詩の果てに日の猫じやらし潦 睦子
言葉が持つ意味の連繋を、超えてしまっている句なのかもしれなかった。
恰も調性も意味のあるフレーズを持たぬ、完全な抽象の音楽の様に。(著者)
◆収録作品より
砂ゆく砂転生にても寄居虫よ 睦子
ヤドカリは地球の至る所にいるらしい。海では陸地を離れるほどに養分が薄くなり、まるで砂漠の様に不毛になるらしいのだ。一縷の希望もないかに見える深海の奥底で、このヤドカリは淡々と与えられた生死を繰り返している。絶望感も現状肯定も感じられない、不思議なヤドカリではある。
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[とみやまたまえ]
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
200頁
2016/03/01刊行