◆第一歌集
歌筵とは、盃を傾けながら楽しく詠い歌いあう場というほどの意味です。雰囲気がよくとても気に入っている語であるとともに、町方氏を偲ぶ意味もあって、書名にいたしました。(あとがきより)
◆収録作品より
車輛詰めにして運ばるる無人称林檎にあらず甘藷にもあらず
悠々と舞ふがに見ゆる鳶なれど巣を満たす狩り易くあらじな
食卓にどろりと寝そべるヨーグルトわが心奥の懈怠のかたち
薄空に上弦の月滲み出でバス待つ人の列ながながと
濃き夏の風吸ひてぶな林は充実きはめ堂々と揺る
年越しに戸隠の蕎麦とどけられ過疎村の越年を思ふ
真言は解せざれども密教の美に浸らむと東博をたづぬ
村鎮守 伊勢神楽太夫道化技 筵の上に笑まふ顔々
四人の育ちざかりの児とともに写真に笑まふ若き父母
さよならのごとき掌を見せ敬礼し誉められたるよ幼年のころ
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[とくやまはっそん(1939〜)「長津田短歌会」所属]
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
186頁
2016/01/20刊行