遺句集
「ここは丹波でかんしよ踊れ踊子草」丹波篠山に生まれた作者は若くして故郷を出、中国や日本の各地を転々とされた。戦後は、神戸に三十余年を過ごされ、還暦を過ぎた頃、故郷に戻られた。望郷と愛郷の念は人一倍強いのである。
(鈴木貞雄)
『篠山』一〇句・寺島美園選
花菜摘む畦に背負籠なかに猫
残生を無駄づかひして日向ぼこ
死ぬまでは続くさびしさ大根煮る
羅の妻をもつとも憶ひ出す
師一語こたへて一語河鹿きく
蒼天と水天の間はちす枯れ
妻に供華ぽとんと咲かす水中花
丹波富士より雷ころげ梅雨に入る
ぺちやくちやと乙女椿の咲き殖ゆる
空に咲き濠の中まで花火の夜
私家版
序・鈴木貞雄
装丁・君嶋真理子
四六判上製函入
192頁
2007.01.19刊行