◆第一句集
上風に木の芽はうすき眼をあけぬ
読者は、黄昏時に人家の灯を見るような淡い人恋しさを感じながら、小鳥たちの声や、木々のささめきや、名もなきいさら川のせせらぎに、しばし耳を預けることになるのではないだろうか。
(序より・石田郷子)
◆収録作品より
朽葉よりつまだつやうに節分草
武蔵野の野狭の光鳥帰る
川風のはづんでゆけり柳の芽
矗矗と夕日落とさぬ栃の花
蝶高く放ちて風の紫苑かな
追憶のいつも揺れゐて秋ざくら
夕風か水車の音か水の秋
碧空に塵をゆるさず竹の春
今朝の冬鶚は堰の風捉へ
遠富士の襞鮮やぎぬ寒の入り
*
[たなかさちね(1943〜)「椋」所属]
序:石田郷子
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
152頁
2015/11/08刊行