◆「百鳥」同人
子と犬を清明の野に放ちけり
拙い句群ではあるが、自分の自分なりに生きてきた証の一部である。一句一句に思い出があり、その時々の気持ちの表れがある。特に、辛く悲しく苦しい時期の心の支えのひとつに俳句があったことは否定できない。
加齢にともない、感性などは若い時に比べれば鈍くなっていることは事実だが、今後も精一杯句作を続け、生涯の一句を成したいという気持は消えていない。
(あとがきより)
◆自選十二句より
花火打つたびに岬が走りけり
石据ゑて庭引き緊まる白露かな
寒牡丹静かに言葉燃えはじむ
雲の峯しんかんと妻のもの干され
寒林を来し青年が献血す
鯉幟太平洋へ出でんとす
大き蜘蛛鰯雲より垂れ下がり
細波は海の心音桜貝
夏蝶の影荒く軒離れけり
雲の影花野へ出でて加速せり
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[やまもとみきお(1938〜)「百鳥」同人]
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
220頁
2015/11/08刊行