◆ 季語は美味しい
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春蘭、えんどう豆、冬瓜、寒鯖など、人間の舌で味わえる季語65品についてのエッセイに、その季語を用いた俳句を一句ずつ添える。平成12年8月号からの『火星』誌連載と、同誌750号掲載の文を合わせて収録。
人間の舌で味わえる季語65品についての楽しいエッセイ。季節の料理のレシピが盛沢山にあり、著者の懐かしい思い出とともに、とびきりの美味しい料理がひそんでいます。季節を豊かに味わうことが本当の贅沢であるということを、わたしたちに気づかせてくれる一冊です。(山尾玉藻・序)
花見の小宴の折、春蘭を箸洗いの一品にした。咲ききる一歩手前の春蘭だけを切り、重曹を入れた湯の中にぱっと離す。春蘭の色が一瞬濃くなる。五秒程で水に取る。別に、水から浸してとった昆布だしに酒少々、塩一つまみで汁を作る。蓋付湯のみに湯掻いた蘭を入れて汁を張る。母は、華奢で縦長の緑色の有田焼きを使っていた。蘭の味をみるというのではなく、春を楽しむ趣向である。蓋を取ると蘭が浮いている。あっと思ってもらうのもごちそうだ。(本文「春蘭」より)
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序文・山尾玉藻
装丁・君嶋真理子 四六判並製ソフトカバーグラシン巻き 172頁