◆「雨滴」「心月」の合本
妻の肩借りて歩かむ春よ来い 恒夫
薫風や笑顔の遺る診察着 光子
光子さんの底力にはますます磨きがかかり、ここに一対のお雛さまのような句集が誕生しました。恒夫さんを偲びつつ、これからを生きる光子さんのエネルギーとなることを願ってやみません。
(「『ふたりの句集』に寄せて」より 高田正子)
雨滴◆高田正子選五句
春立ちて我九十となりにけり
天仰ぐわれに宿痾や蝮草
青梅雨や先に逝かぬと約束し
ひもじさが今はなつかし夏終る
凍蝶のごとくひたすら眠りたし
心月◆高橋光子自選五句
空はまだ少女の色や花水木
義理なさけ遠慮申して瓜の花
置き処無く空蟬を手につつむ
国境に兵一人立つ鰯雲
元日や老いても朝の薄化粧
*
[たかはしつねお(1924〜2014)]
[たかはしみつこ(1931〜)]
「雨滴」序・帯:高田正子
父のこと:高橋圭子
母のこと:高橋俊夫
装画:高橋光子
装丁:和兎
雨滴/128頁 心月/128頁
2015/11/13刊行