第50回蛇笏賞受賞！
◆第九句集
嬉々として地衣類に冬めぐりけり
地球生命の誕生から人類へという時間の縦軸、変転する国際社会や自然環境という空間の横軸が交わるところ、一個人の生活と意識も揺らぎつづけてやまない。この人間という生物のなんという不思議さ。伝統の短詩型で、それを如何に受け止め得るか、怠惰かつ不才にして力及ばないが、拙い試行の記録にはなろう。
（あとがきより）
◆収録作品より
三伏や火の入りまじる中華鍋
つめた夜の静かな水を飲みにけり
指を入れ掌をあて秋の水
よくひびく体さくらの峠来て
では剝いてやろ空豆の宇宙服
庭寒く小さく強く薔薇いつも
細切れに野菜を干して妻の冬
へしあへる実をびつしりと柘榴爆ぜ
残雪や焼き枯らしたる岩魚の目
読みさしに緑の蜘蛛が走りけり
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［やじまなぎさお（1935〜）「梟」主宰］
題字：顔真卿
装丁：君嶋真理子
Ａ５判上製カバー装
144頁
2015/09/25刊行
