◆第四句集
秋の帆となるまで沖へ帆走す
句集名「不二」は勿論、子供の時より親しんで来た富士山に敬意を籠めての呼びかけであり、私の俳句に対する決意でもある。富士山は一種の希望の象(かたち)であり、真理の象として今も在り続けている。
(あとがきより)
◆自選十五句より
人影に湿る仲見世菊供養
月光に羽化のはくれん母の忌来
赤松を見上げ秋日に到りけり
冬山の奥に一峰父の忌来
日蝕のあと芍薬の衰へし
青葦や猟犬湖の水を飲む
田草取る背を削るかに雲の影
赤々と働きし日々茨の実
冬耕や富士ある限り空蒼し
鍬つかふ婆が点睛山眠る
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[きたじまたいか(1940〜)「萬緑」同人]
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
210頁
2015/09/23刊行