◆第三句集
春惜しむ店の机にもの書いて
香代子さんの俳句はどれもなつかしく、ほのかに寂しい。いつか失う予感を孕んでいるからだろう。だから一層なつかしい。家業の和菓子屋も畳んだ。机から顔を上げた香代子さんの行く道は、この句集から始まっている。
(帯より・小川軽舟)
◆自選十五句より
われに永き水棲のころ夕蛍
雪ぼたる木霊蒐めてゆきにけむ
昼寝覚柱鏡に入るひかり
永き日や大仏を見て海を見て
南風吹く声なきものらわたなかに
海峡にかかる船あし秋のこゑ
人の世の晩景にあり氷頭膾
露けしや漱石のペン子規の筆
東は西よりさびし冷し酒
少年のイエスは知らず草雲雀
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[おおいしかよこ(1955〜)「鷹」同人]
装丁:和兎
四六判フランス装カバー装
224頁
2015/07/21刊行