◆第一句集
ふりむけば誰かゐさうな秋の暮
芭蕉の〈此道や行く人なしに秋の暮〉をも想起させて、季語の本意・本情に迫っている。
このように、人恋しさとか懐かしさを、しみじみと感じさせる秀句佳句が多い。
(帯より 鷹羽狩行)
◆西宮舞抽出十二句
神捏ねし泥より生れ青山河
掬はれて金魚は紅き尾をたたむ
いくたりも声をつなぎて初電話
遠足と螺旋階にてすれ違ふ
ゴンドラの揺れて桜の山ゆらぐ
太陽を遮る何もなく泳ぐ
火の鳥の翼をひろげ夕焼雲
盆の月夫の知らざる孫ばかり
天高し神の厩に馬をらず厩
夜は星の臥所とならむ大枯野
大仏の指に届く冬日かな
時計鳴る帰省の一家去りしあと
*
[なかのゆうこ(1940〜)「狩」同人]
序句・鑑賞三句・帯:鷹羽狩行
跋:西宮舞
装画:中納弓生子
題字:山本ルミ
装丁:和兎
四六判上製カバー装
194頁
2015/06/17刊行