◆最新歌集
前歌集上梓から約十年が経過した。しかしこの十年間は学びの時期として必要だったのかも知れない。歌風も変化してきているようだ。
（後記より）
◆自選十首
みちのくの束稲山ゆ見下ろせば水の張りたる春田の光る
雪原のごと蕎麦畑のひろごりて君に写真をおくるよきつと
来て見れば桜の花の花びらが黒き畑へ静かに散れり
みちのくの栗駒山の山肌に錦を掛けし竜田姫はも
わが犬の散歩にわが猫ついて来て並んで歩く兄弟のごと
夜されば新興住宅地は静かなり時折犬の吠え交はす声
草原に大きな石と思ひきや黒き兎の静かにして
冬こもり春さり来れば色色の鳥の鳴き交ふ配志和の森
いきいきとまなこ見開きアリスが甲虫見るデパートにパパと
けふもまた配管工は穴を掘る半そでの背が汗でびつしより
*
[いしかわきよふみ（1968〜）]
装画：町静（「蕎麦に月」）
装丁：和兎
四六判上製カバー装
264ページ
2015/05/31刊行
