◆知られざる一句
今まで世上に取上げられることの少なかった句を対象の中心とすることによって、また別な「水原秋櫻子」を表すことが出来たらと願った。
(あとがきより)
◆収録作紹介
古町は初日の池にあそぶ鴨
鳥の句では鴨が最も多く、他の季のものを含めると百を遥かに超える。中でも初日との配合は十を数える。それまでに「林泉、汀、崎、港」などを詠んでいるがその最後の句。ひとつの景を繰返し求めながらそれぞれに完成度の高い作である。胸中の景ではあるが鴨の羽搏き、飛沫の光まで感じられる。省くもののない一幅の絵のような、
秋櫻子最晩年の美意識に適ったものといえる。
(『うたげ』昭和五十六年作)
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[おのえみこ(1942〜)「馬醉木」同人]
装丁:和兎
四六判変形並製カバー装
142頁
2015/05/01刊行