◆赤のシリーズ/第一句集
教室の空気真つ新更衣
万葉集の東歌のように衒いのない率直な言葉。現実の生活に根差した精神は既成の詩歌の甘さを突き抜け、そこから生きる真実の歓びと美しさとがにじみ出る。
「しもつかれ」という下野の郷土料理のように、素朴で滋味深い。
(序・松浦加古)
◆自選十句
茄子の馬前足少し浮きてをり
教室の空気真つ新更衣
白鳥を岸へあがらす野分かな
針刺に妣の髪あり終戦日
焼きたての鮪のかまにぎゆつとレモン
諭す児のあふるる涙柿若葉
湯豆腐の揺らぎが合図掬ひどき
魴ぼうの寄り目がにらむ春の蠅
花の夜は頬杖とくかロダン像
霜晴や戸外に寝かすしもつかれ
*
[よしざわやすこ(1943〜)「蘭」同人]
序:松浦加古
栞:神野紗希
装丁:和兎
四六判変型半上製カバー装
214頁
2015/04/21刊行