◆第一句集
?冱つるまで荒海に向き合へり
花野いま狐の嫁入り通りけり
卒業す民族衣裳それぞれに
ここには、再出発を果した龍子さんの真摯で心豊かな歩みが如実に示されている。厳しい冬の「荒海」に毅然として立ち向かい、美しい「花野」に陶然と同化し、華やかな「民族衣装」に旅の記憶を蘇らせ人生を味読している。
(序より・大串章)
◆自選十句
古雛空飛ぶことをおもはずや
咲き満ちて花の塔なる椿かな
敗れたり梅雨のゴールに立ち尽す
空中に吊りし花籠凌霄花
生かされて大夕焼に包まるる
花野にてと差出人の名はあらず
露の世の晴れ着の家族写真かな
地下街に酌む十五夜とおもひつつ
よろこんで父雪投げの的となる
フランス語の席へ湯豆腐運ばるる
*
[はなぶさりゅうこ(1938〜)「百鳥」同人]
序:大串章
跋:太田土男
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
206頁
2015/03/25刊行