◆第十六句集
「五情」とは喜怒哀楽怨の称。
眼・耳・鼻・舌・身の五根。
根が情識を有するからという。
句歌集を入れ第十六句集なので、
それにふさわしい文字を探していたら、
少女時代に書いた詩のノートを思いついた。
六十年抱え込んでいた言葉だ。
(あとがきより)
◆自選十句
鶴舞へり夕日を抱く形して
繭玉に怺へこらへしものゝ噴く
花烏賊のついとよぎれるごとき夢
朝まだき空気の渦や櫻鯛
龍天にのぼる私は眠くなる
腕のばすかぎりは領地百日紅
蔓薔薇のしかと捉へし闇の芯
文庫本ほどの哀しみ袋角
月に断つ髪うごめきてゐたるかな
死神はいかな匂ひぞ豆の飯
*
[はたゆみ(1938〜)「GA」発行人「豈」所属]
装丁:君嶋真理子
四六判変形上製
174頁
2015/02/14刊行