◆ 狩行俳句の魅力に迫る
鷹羽狩行の五十年にわたる二十世紀の句業の中から、女流の感性で抄出、鑑賞。
優遊から滋味平明へと深まる秘法を精緻・軽快に描く。
鷹羽狩行の世紀新たな解説書。橋本美代子(帯文より)
「朱雀」に「鷹羽狩行俳句鑑賞」を書く機会が与えられました。句作を始めて二年余りの初心に難しい理論は書けないけれども、一瞬の感動や感慨をその時々に書き留めて残しておこう──そう思いました。
本書は、狩行先生のお句を拝借し、ひととき、想像の世界へ自分を解放させた私自身のための記録です。著者(あとがきより)
草虱生きものに付く生きるため
狩行俳句には、この世の命あるものはもちろんのこと、無機物にまで温かい眼を向けたものが多い。その中でこの句は、情趣や余韻・余情を省き、単純にして明快に対象そのものの存在の意義を認識させたものである。
「草虱」は、人の服や動物の毛などに取り付き、そのしつこさが嫌われる。だが、子孫を増やしこの世に長く生存するには、「生きものに付」いて、種を遠くへ運ぶことがこの植物にとっての「生きるため」の方法なのである。「何々のため」という断言が、草虱の真実をより浮き彫りにしていて、理屈でわかっていることが改めて心にひびく。
この句と似た発想に、〈黴の世の黴も生きとし生けるもの〉があるが、掲出句は、「生き」のリフレインによって、生きとし生けるものの生存の意義をより深く認識させている。
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帯文・橋本美代子 装丁・川島進(スタジオ・ギブ)
四六判上製カバー装 284頁
○著者略歴
南 千恵子
昭和10年9月29日大阪府豊中市に生まれる。平成3年9月「朱雀」に入会、作句を始める。平成4年「狩」入会。平成12年狩同人、俳人協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)