◆第二句集
世俗のなつかしさに満ちた切れのよいウィットが奥野さんの俳句のいちばんの持ち味。それと同時にこの世の過ぎた時間を哀れと思う心情が奥行きをもって表される。その心情は自分の身に過ぎた時間への愛惜ともなり、近年の作品の円熟をもたらしている。
(帯より:小川軽舟)
◆小川軽舟抄出十句
がちやがちやに死神通り過ぎにけり
極月や野にひろびろと鳥のみち
人柄を竹に喩へつ寒の晴
伊吹山ころげ落ちたり春の雷
さざ波は返らざる波敗戦日
今の灯のまぶしからずや享保雛
夕ぐれに年をとるなり著莪の花
洛陽や掌に打ちし蚊の縞のこり
消すよりも灯すがさみし秋の宵
買初のペンの試し字大阪市
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[おくのまさこ(1961〜)「鷹」同人]
序・帯:小川軽舟
装丁:和兎
四六判上製カバー装
208頁
2015/01/15刊行