◆第一句集
へうへうと蒲公英絮の遊行かな
この句はたんぽぽの真っ白なわたげが、ふわふわととんでいるさまを写生したものだろうが、鮫島さんの自画像に思える。
真っ青な空のもと、何ものにもとらわれないで遊行上人となっておられるのだ。
(序より・武藤紀子)
◆自選十二句より
立春の鐘響かせよ山の寺
紅梅の引き寄せて来る深空かな
ほほえみの母の遺影や春障子
校門の開け放たれて巣立ちかな
花万朶遺品に残る弾丸の痕
くろがねの御門を潜る蟻の列
一滴の水貴しや原爆忌
一雁の遅れて行けり朝茜
国境球磨も薩摩も霧の中
焚火して闇を動かす農夫かな
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[さめしましげとし(1933〜)「古志」「円座」同人]
序:武藤紀子
装丁:和兎
四六判上製カバー装
218頁
2015/01/17刊行