◆ふたりで見いだす俳句の風景
水鳥の真中へずずと遠めがね 蒼石
野鳥観察の句としてユニークだ。水鳥の群を押し分けるようにして望遠鏡の視界が
割り込む感覚がリアルに伝わってくる。
野ねずみの穴に日のあり萱枯るる 紀代子
萱が枯れて野ねずみの巣穴が目につくようになった。間もなく雪が降り始め、すぐに根雪になる。野ねずみの穴を通して雪国の季節の移ろいを心優しく感じ取っている。
(序より・小川軽舟)
◆亀田蒼石選
左義長の灰吹いて菜を摘みにけり
柳絮とぶ嘉門次小屋のけむりだし
水鳥の真中へずずと遠めがね
アラブなど行きなさんなと団扇風
基督も仏陀も異人飛魚跳べり
名月や沈めしままの皿小鉢
野兎の糞みづみづし木の根開く
人にみなうしろ姿や夕ざくら
◆亀田紀代子選
母に似る仕種が怖し姫女苑
半日はわたしの時間紋黄蝶
お仕置の記憶の土蔵桐の花
待つは楽し小鳥来る日の縁拭きて
古ピアノ売りたる小金啄木忌
榠?の実六十にしてわが机
夫大事われなほ大事雪催
観音のうしろにまはる蕨狩
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[かめだそうせき(1937〜)「鷹」同人]
[かめだきよこ(1940〜)「鷹」同人]
序・帯:小川軽舟
装丁:和兎
四六判上製カバー装
312頁
2015/01/15刊行