◆私家版
春の風波をひろげてゆきにけり
ふりかえってみますと、俳句と謡はつねにかたわらにあって私の生活に張りをもたらしてくれる存在でした。願わくはこれからもそうでありますように。
(あとがきより)
◆自選十一句
参道の短かけれども茂かな
風通しよき家にして父の声
八月の少女に地味な服が良く
柊の老いて気づける香とおもふ
大注連の揚がりし下を掃いてをり
餅花に指の痕とはあたたかき
玉砂利にうすきところや寒戻る
「芝浜」は夢のはなしや三の酉
お降りの次第に音となりにけり
目刺藁結び目一つつけてあり
春を待つ蕾といふはみな丸く
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[とくながしずこ「蘭」同人]
装丁:和兎
四六判変型上製薄表紙カバー装
168頁
2014/12/28刊行