[立ち読みする]
◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
紫木蓮売れぬまま家朽ちてゆく
台風ののろのろときて人攫ふ
現実を直視して決して逃げることのない誠実な人柄――。
風船を割る象の眼の笑ひけり
土雛のでんと座りし団子鼻
日常の緊張から解放され、ほっと笑いがこぼれる時間は、何ものにもかえがたい喜びであもある。
人生山あり谷あり。だから俳句が楽しい。
(帯より:行方克巳)
◆自選十句
冬ざるる境内に樹の声もなし
水に散る光の破片十二月
水槽の河豚や人間値踏みして
綿虫につきてゆきたし浮かみたし
噴水の笑ふがごとく泣くごとく
鹿の眼のむかう向き耳こちら向き
みづすまし水の扉を開きゆく
ハンカチの正方形を疑へり
風船を割る象の眼の笑ひけり
柘榴落つ神に愛想つかされて
*
[なりたうらら(1944)「知音」同人]
序句・帯:行方克巳
序:西村和子
装丁:君嶋真里子
四六判上製カバー装
236頁
2014/11/13刊行