[立ち読みする]
◆ 第一句集
「夫の卸せし大根の辛きこと」
大根を手荒にすりおろすと辛いと言われている。夫に手伝ってもらった大根卸し、その辛さで大急ぎでやったことがわかった。「昨日よりやや疎となりし梅むしろ」筵の上に広げられた梅干が、昨日よりもどことなくまばらに思われた。天日に干されて水分が減ったからだ。写生の目の確かさがある。
(鷹羽狩行)
夫の卸せし大根の辛きこと
ひと降りに目鼻ふさがれ雪だるま
釣糸を風があやつり浦島草
ともづなを輪投げのさまに秋高し
昨日よりやや疎となりし梅むしろ
水軍の舟隠し場へ遊び船
吊鐘の中へ身を入れ煤払ひ
終便の即ち月見船となる
向う岸からも見守る秋出水
桟橋の一歩に香る花蜜柑
序句/帯・鷹羽狩行 跋文・八染藍子
装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装
192頁 2007.12.22刊行