◆第一歌集
短歌にはユーモアの力がある。
◆収録作品より
「現在のあなたの趣味はなんですか?」「つり銭なしで払うことです。」
大金をいくら払えど病院はポイント一つ付けてくれない
商談の今日の仕事はウォーリーを探すくらいの神経衰弱
起きたては何もかにもが気だるくて利き腕でもつパンが重たい
勢いで〈目〉という漢字の横線を四本書いてしまった原稿
つつんだ人とまったく逆の手順にて包装を解く秋のせんべい
秋の服を選びかねると一瞬のひらめきがあり冬が始まる
救急車がだんだん近くにやって来てやがてだんだん離れていった
五、七の調子を合わす指折って手袋の手でぼそぼそぼそと
アパートの階段のぼる子供らが一番大きい音をたててく
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[せきぐちしいち]
装丁:君嶋真里子
四六判並製カバー装
218頁
2014/10/26刊行