◆ふらんす堂編集日記
◆第二句集
追憶こそ我が得し遺産冬すばる
亡き夫恋いの鎮魂の第一句集『星彦』に次ぐ第二句集。追憶が遺産と言い切れる迄の心の軌跡を思う。愛しく真摯な女人の姿がある。
日の本のあけぼのの色朱鷺巣立つ
『枕草子』冒頭で有名な日本の春の曙。その色を持つ朱鷺の巣立ちの明るさ。自然や野生動物への共感の優しさ。美意識の豊かさ。文化遺産への関心の深さなど、総て作者の豊饒な句境を支えている。
(帯より・鍵和田柚子)
◆自選十句
やうやうにくすむ西塔秋艸忌
冬の薔薇わが胸中に墓標あり
鳩吹くやさびしきまでに嶺高し
追憶こそ我が得し遺産冬すばる
海鞘食うて不可思議な世を永らへむ
菱餅のかさねの色や吉野山
白靴の汚れやすきを愛すなり
八月やイマジン歌ひ継ぎゆかん
列柱は骨の白さよ鳥渡る
せめぎあふ和紙と墨痕冬の雷
*
[もりじりひろこ(1941〜)「未来図」同人]
帯:鍵和田柚子
栞:石田郷子
跋:守屋明俊
装丁:和兎
四六判フランス装カバー装
228頁
2014/11/01刊行