◆ふらんす堂編集日記
◆第六句集
早春の宙で反芻して麒麟
第一句集『甕の水』を出版したのが六十六歳のとき、その後『朱雀』『白虎』『玄武』『青龍』そしてこの『麒麟』は第六句集。やっと、漸く、遂に、という思いです。
(著者)
◆自選十二句
刃物屋の並べる抜身緑さす
片蔭を少し濡らして研師去る
男爵もクインも裸芋洗ふ
越前蟹食べ越前に殻残す
二月堂出で沢蟹の水となる
知らで踏む正倉院の桜の実
しぐるるや右も左も奈良格子
花冷えや少年阿修羅天衣のみ
一張羅でありしを脱ぎて蛇の衣
経歴に書かぬ兵役梅雨茸
夢殿の庭の狭きに落し文
月見草富士は谺を還さざる
*
[ありやまやすひこ(1924〜)「朱雀」主宰「狩」同人]
装丁:和兎
四六判上製カバー装
200頁
2014/10/26刊行