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◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
春嵐いろんなものが落ちてをり
集中こんな句がある。具象といえる言葉は春嵐だけ、それも既に吹き荒れた後に
いろんなものが唯落ちているというだけの認識である。具象の意識といえばよいか、言葉としては何もないのに確かに色んなものが見えて来る。裕子俳句の特色の一つであろう。
◆収録作品より
バス行つてしまひし乗り場つばくらめ
地下鉄の窓開いてゐる薄暑かな
決めかねてゐることひとつ梅雨の蝶
看板を蹴つて屋根方鉾まはす
一本の足は葉裏に?の殻
天窓の形に光るプールかな
海女舟の引き上げられし浜小さく
虹立つてゐるところまで行けさうに
近づけどもう虹も無くなにも無く
アラブ馬の絵の描かれし日除かな
まだどこか壊れものめく仔馬かな
*
[やまうちゆうこ(1954〜)「夏潮」所属]
序:森田昇
栞:本井英
装幀:君嶋真理子
四六判上製カバー装
198頁
2014.10.14刊行