◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
橋すぎるころには暮れて桐の花
『桐の花』は、平成八年から二十五年まで十七年間の作品のうち、厳選の二百八十五句を五章に分けて編まれており、隅々まで目の行き届いた文学性の高い句集である。句集名の「桐の花」は、佳人悠子さんにぴったりの印象である。
(跋より・山口あつ子)
◆自選十句
ばんどりに編み込む緋色春を待つ
クレソンや水かげろふに顔濡らし
橋すぎるころには暮れて桐の花
磯畑の隅にもの干す灸花
夜祭の果てたる水の暗さかな
仏性のたとへば青き櫟の実
転生の果の蓑虫鳴かぬなり
落葉もう急がず母のみまかれる
いつまでも子は母のもの蕗の薹
遠山へ雨移りゆく魂送り
ひと雨に秋の定まる灯色かな
*
[しのはらゆうこ(1941〜)「野火」同人]
跋:山口あつ子
装幀:和兎
四六判フランス装グラシン巻
176頁
2014/10/04刊行