◆第24回 丸山豊記念現代詩賞を受賞しました!
◆異郷の人々への遠い言霊
のばした指先にふと消える半島 むこうで根を絶たれ こちらで宙に浮く
少年期を共に生きた異郷の人々への遠い言霊
流れ去った時代の面影が
水を切る石のように
ここに甦る
◆序詩より
むこうで根を断たれ
こちらで宙に浮く
生傷の絶えない時刻は
切れぎれて
垂れる血のみ
流れつづけている
六十年あまりの天蓋の
どこを吹いていたのだろう
ものを熟して
落下する
時刻は
そして
落ちたところが
「ここ」という
ここは
在るのか
無いのか
黙する
蒼を増す空の一点
雪片か
花片か
しるしのように
舞い落ちる
「帰る」とも
「帰らない」ともいわずに
あなたは帰る
*
[わかおよしたけ(1946〜)]
装幀:稲川方人
四六判上製カバー装
126頁
2014.06.25刊行