[立ち読みする]
◆ふらんす堂編集日記
◆第一句集
蚤の市天使も売られ涼しかり
日々日常の暮らしの内に、時として心の中に起こる神秘の〈楽音〉がある。精神の摩滅したものには聞えぬが、感性の研ぎ澄まされた内なる耳を持つものには、神の啓示のごとく、それがとどく。
句集『聖夜の樹』は、それらの〈うた〉を輯めた清冽な楽曲集である。
(序より:星永文夫)
◆自選十句
元朝の雪吉兆と思うべし
朝刊にサリンジャーの死麦芽ぐむ
波音はやがて祈りに春岬
大手門より夜桜の沸点へ
白日傘夢二生家に置き忘る
海霧ながる近くて遠き国境
林檎齧る同じ貌したナバホの子
一枚の毛布と自由とバーボンと
霜の朝十字に括る新聞紙
聖樹立つ一夜かぎりの異邦の輪
*
[たなかじゅんこ(1952〜)「波」「霏霏」同人]
序・星永文夫
装丁・和兎
四六判並製カバー装グラシン巻
166頁
2014.02.10刊行