第29回大阪短歌文学賞受賞!
◆ふらんす堂編集日記
◆短歌と童話の織りなす世界。韻律とファンタジーの饗宴。
喉仏に触れてこれは骨なのときけば神様だよと言いたり
言葉が肉体を浄化していく。
◆短歌作品より
掬っても掬っても破れない紙で赤い魚を追い詰めていた
叱られて泣き出すまでの静けさの同心円のなかのひぐらし
ゆうぐれが来ませんようにと願いたりこういこういと鯉を呼ぶ背に
触れられぬ白さ哀しきスノードロップ最後の冬の坂田博義
おいでおいでみんなおいでと水は呼びそのまま春を連れてゆきたり
雄ロバと雌馬の子は騾馬なれど「その逆は??、役立たず」とあり
白くまの薄汚れているあの感じ貨車のひとつに雪は残りて
扇屋を知りませんかと尋ねられ扇屋へいく道のない道を
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[ふじた・ちづる (1964〜)「塔」編集委員]
装丁:和兎
A5判フランス装カバー装
192頁
2013.12.10刊行